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第1章 牡丹

私の家は貧しい家庭でした。

父と母は若い頃、反対を押し切って家を飛び出し
街の片隅で息を殺すように暮らし…私が産まれました。
父と母のそれまでの人生を私は知りません。


私がが物心ついたときから母は身体の弱い女性で
寝たり起きたりを繰り返すような暮らしをしていましたが
父は母を見捨てたりはせず私たち母娘が生活するだけの暮らしの糧は渡してくれていました。

しかし、他に女がいるらしくめったに家に帰ってくることもなく
小学校に上がる頃には顔もほとんど見ることもなくなっていました。
それでも背が高く、彫の深い顔立ちは私に強い印象を与え
いつまでも心に深く刻まれていました。

私は父が何の仕事をしているか知らなかった。

その時が来るまでは…