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化粧彫り
第1章 牡丹
私が高校2年生の夏休み、部活を終えて家に帰る途中
突然の雨に降られてしまいびしょ濡れでアパートに辿りつきました。

アパートの中はうす暗く雨の音で少しぐらいの物音は聞こえません。
奥の部屋には母が寝ているはずですが、物音もせず
時々光る雷に首をすくめながら靴を脱いであがりました。

“うわぁ…気持ち悪い…”

私は母しかいないことをいいことにバスタオルを持ちだし
キッチンでお茶を飲みながら濡れた制服から下着まですべて脱ぎ捨てました。


かちっ…どこかで密やかにドアのあく音がしたはずだが
その音も雨音に消され私の耳に届いていませんでした。

その隙間からじっと見つめる視線も薄闇の中で溶けてしまう…


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