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化粧彫り
第1章 牡丹
父は私を見下ろし熱っぽい口調でつぶやいた。

“こんなに白く、きめの細かい肌だったのか…靖子と同じ…”

それは父親の目でも、男の目でもない…
長い間探し求めていた獲物を見つけた時の瞳だった。
そしてその奥に揺らめくような狂気の炎…


“ん~…ん…っ”
私は身体をくねらせ父親から逃れようとするが手足を縛られていてはどうしようもない。
父は私をうつ伏せにすると肩から腰を掌でなぞった。

“きれいだ…彫りやすそうな柔らかい…
そうだな…曼珠沙華…いや…牡丹…”

父は私の背中を見つめ、ゆっくりと顔を近づけすぅ…っと舌で嘗め上げた。

“ん…っ!”
生暖かくざらつく感触に思わず身体が強張るが、父はその行為を止めようとしない。
ゆっくり…ゆっくりと私の肌を確かめるように…
肩から項、背中、腰、脇腹…と舌を這わせている。


“ん~っ…んっ…”
いくら声を出そうとしてもタオルで猿轡をされていては何の効果もなさない。
それでも母が隣の部屋にいるはずだ。
止めてくれるはずの母は何をしているのだろう…

隣の部屋は誰もいないかのように何の物音もしない。

雨が安アパートの屋根をたたく音がするだけだ…
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