この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
愛しい記憶
第2章 断片
はい、と彼女は俺にコップを差し出した。
「ポカリ」
「あぁ……ありがと」
甘ったるい香り。
飲み終わると、なんとも言えない味が舌にまとわりつくように残る。
何の気なしに見つめた彼女の唇が少しカサついていた。
「あれから、結構熱上がったの…?」
「……………」
「お風呂とか……入れてるの?」
心配してくれているのが分かる。
でも、今さら、彼女は誰なんだろうかと、そんなことを考えている。
きっとこれは異常な状態なんだろう。
記憶喪失なのだろうか。
いや、それは少し違うような気がする。
なぜなら、“彼女のことを知っている”という記憶は残っているのだから。