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愛しい記憶
第12章 新生活(回顧)
ろくに話もせずに、身体を求めてばかりいる俺を楓は責めない。
何があったのかも聞いてこないまま、ずっと探るような眼差しを俺に向けては目をそらす。
「行くね……」
服を着ながら、楓が呟いた。
茶色い髪がボサボサとうねっているのを見て、俺はそれを背後から手櫛でとく。
「ありがと」
「うん」
振り返った楓の物欲しそうな表情を見て、キスをする。
楓はそんな俺の行動に満足そうにすると、立ち上がってじゃあ、と言った。
扉が閉まる音。
それを聞いて俺は虚しさとともに、仰向けに倒れ込んだ。