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愛しい記憶
第12章 新生活(回顧)




先ほど楓を抱いたベッドに、姉ちゃんが腰掛ける。



カーテンのない窓。



嵐のせいでガラスが音を鳴らす。



再び抱き締めようと姉ちゃんに近付こうとしたら、姉ちゃんは、うっと声を詰まらせて口元を押さえた。



姉ちゃんの左手の薬指に指輪が光る。



「姉ちゃん………?」



「ごめんっ……ちょっと……っ」




トイレに駆け込んだ姉ちゃん。



そして聞こえてきた嘔吐している声に、俺は目を見開いた。




あぁ……なんて残酷なのだろう…





姉ちゃんがここに来た理由を悟った俺は、窓の外をぼんやり眺める。




こうなった今、俺たちに残された道は……





「……大丈夫……?」



「うん……」




口をゆすいだ姉ちゃんは、手の甲で水滴を拭った。




「友也………」




姉ちゃんの眼差しは優しかった。




「………あそこの川…どうかな」




言わなくても分かってる。


だから俺は微笑んで、そして姉ちゃんの唇を塞いだ。



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