この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
愛しい記憶
第12章 新生活(回顧)
先ほど楓を抱いたベッドに、姉ちゃんが腰掛ける。
カーテンのない窓。
嵐のせいでガラスが音を鳴らす。
再び抱き締めようと姉ちゃんに近付こうとしたら、姉ちゃんは、うっと声を詰まらせて口元を押さえた。
姉ちゃんの左手の薬指に指輪が光る。
「姉ちゃん………?」
「ごめんっ……ちょっと……っ」
トイレに駆け込んだ姉ちゃん。
そして聞こえてきた嘔吐している声に、俺は目を見開いた。
あぁ……なんて残酷なのだろう…
姉ちゃんがここに来た理由を悟った俺は、窓の外をぼんやり眺める。
こうなった今、俺たちに残された道は……
「……大丈夫……?」
「うん……」
口をゆすいだ姉ちゃんは、手の甲で水滴を拭った。
「友也………」
姉ちゃんの眼差しは優しかった。
「………あそこの川…どうかな」
言わなくても分かってる。
だから俺は微笑んで、そして姉ちゃんの唇を塞いだ。