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愛しい記憶
第12章 新生活(回顧)


置いてあったルーズリーフの袋から、姉ちゃんが紙を一枚取り出す。



キッチンの台。



背後から腕を回す。



何を書いて良いのか迷っている姉ちゃんからペンを奪った俺は、躊躇いなく文字を並べた。




ボコボコとしていて、書きづらい。


でもそんなこと気にならなかった。





ポタ……と姉ちゃんの涙が落ちて、紙が歪む。




「泣かないで」



「……ごめん…っ」




書く手を止めて、姉ちゃんの首筋にそっと口付ける。




「ぅっ………」



最後まで書き終えた俺は、そっとペンを置いて泣いている姉ちゃんを抱き締めた。


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