この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
愛しい記憶
第2章 断片
呼び鈴が鳴って、再び目が覚めた。
あれからどれくらい寝たか分からない。
空気を吸って吐くだけで、先ほどより身体が楽になっているのを感じた。
そうしている間にも、とにかく呼び鈴が鳴り止まない。
仕方なく身体を起こして玄関に向かった。
床がひんやりとして冷たい。
すっかり冷えた足で、玄関を降りて、無防備にドアを開けた。
「あ………起きてた?」
少しだけ開いた扉から顔を覗かせた女。
明るめの茶髪がふんわりとウェーブして肩まで伸びる。
まつ毛はしっかりと上を向き、唇は血色がいいけれど、人工的な紅さだった。
きっと口紅をひいたからだろうけど、男の俺にはよく分からない。
「………今、起きた」
素っ気なく返事をすると、彼女はそっか、と言葉を落とした。