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愛しい記憶
第2章 断片


「入ってもいい……?」



微かに震えているのが分かる。



何かに怯えている。



探るようにじっと見つめられて、居心地が悪くなった。




「別に、いいけど」


「……ホントに?」


「……う…ん」


「ありがと……」




ドアがさらに大きく開いて、女が中に入る。



先ほどは見えなかったビニール袋が、カサッと音を立てる。



「おかゆとか、ポカリとか、買ってきたから」



どうやら、俺が風邪を引いていることをこの女は知っているらしい。




「ありがと……」




うん、と頷いた彼女は、女特有の良い香りを振りまいている。



それは微かに記憶をくすぐる匂いだ。



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