この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
愛しい記憶
第2章 断片
「入ってもいい……?」
微かに震えているのが分かる。
何かに怯えている。
探るようにじっと見つめられて、居心地が悪くなった。
「別に、いいけど」
「……ホントに?」
「……う…ん」
「ありがと……」
ドアがさらに大きく開いて、女が中に入る。
先ほどは見えなかったビニール袋が、カサッと音を立てる。
「おかゆとか、ポカリとか、買ってきたから」
どうやら、俺が風邪を引いていることをこの女は知っているらしい。
「ありがと……」
うん、と頷いた彼女は、女特有の良い香りを振りまいている。
それは微かに記憶をくすぐる匂いだ。