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愛されたいから…
第7章 南郷の自宅
雄々しく猛々しい南郷さんの身体が俺を包むように俺の貧弱な身体と重なっていて絶対的な安心感を俺に与えてくれていた。

俺は南郷さんが好きです。

そう言いたかった俺に南郷さんがキスをしてから

『イルマにイカされちまった。』

と照れたように笑って抱きしめてくれる。だからずっとこのままでいたい…、とかそんな子供じみた事を俺は考えてしまう。

でも吹き出した2人分の精液を受けた俺の身体が汚れていたから南郷さんが

『まずはシャワーだな。』

と言って俺から離れて笑っていた。その笑顔に何も言えなくなる俺は黙って頷き南郷さんの言葉に従うだけだった。

南郷さんとシャワーを浴びて着替えた俺に南郷さんがコーヒーを入れてから

『飯でも食ってから送るよ。』

と言って来る。俺は南郷さんの服の端を握って

まだ…、貴方のそばに居たい…

そう言いたかった。だけど南郷さんは

『そんな顔されたら本気になっちまうな…。』

と独り言のように呟いた。その言葉に反応したように

ドクンッ…

と俺の心臓の鼓動が聞こえていた。

今、彼は何て言った?

ドクンッ…

また大きく鼓動がした時、俺は南郷さんが本気になってしまうとか言った…、と理解した。

ドクンッ…

と更に俺の鼓動が甲高い音をさせて来る。

それって…、つまり、俺には本気じゃなくて遊びのつもりだったって事ですか?

一気に俺の中で信じられないような感情が湧き出ていた。それは嫌悪感や憎悪に近いような、悲哀や羞恥心にも似た感情が全て混ざり合って俺に押し寄せて来るような感覚だった。

南郷さんはただちょっと可愛い女の子みたいな男を面白がって遊んでいただけなんだ。

24歳にもなって、男に遊ばれているだけなのに本気で夢中になっていた自分自身に俺は嫌悪と憎悪が湧き上がる。

俺は…、俺は本気で南郷さんが好きだったのに…

俺の頭の中には羞恥心で今すぐにでも泣きたくなる自分も居て、いつものように俺は頭の中がパニックになり始める。

『イルマ?』

そう言って俺の顔を覗き込んで来た南郷さんを突き飛ばすように離してから俺は自分の荷物をひったくるように拾い上げて

『帰ります。仕事の邪魔して、すみませんでした。』

とだけ言って南郷さんの家を飛び出していた。
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