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八重の思いー私を愛した2人の彼氏
第9章 あの時-千弥の封じた過去

だけど周りが見ているこの状況で、断るなんてムリ。……受けたら受けたで、キツい目が飛んで来そうだけど。だから私は曖昧に答えることを選択したの。

「私なんて先輩には釣り合いませんから」
「なに言ってんだよ、俺が選んだんだ千弥の趣味は悪くねぇ。小柄な美人はウケが良いんだぞ?」
「私……美人ですか?」
「俺が気に入るくらいにはな」

この頃の私は今よりもっと明るい髪色で、少し大人びたような化粧の仕方をし、精一杯背伸びをしていた。新規生あるあるの1つだよね、成人過ぎには見られたいってやつ。

なし崩し的に九鬼と付き合うことになり、私はこれ一度で終わりだと思っていた。九鬼先輩と言えば、いつも違う女性が先輩の隣を歩いているので有名だったから。私のことも一度だけの興味本意、その程度の意識。

でも違った。LINE交換をしてその日は別れた九鬼だったけど、次の日からLINEが頻繁に入って来るようになり、既読放置は不味いかなと返事を入れる日々。
はっきりと言えば面倒くさい、なんで私が好きでもない九鬼に、日に何度もLINEを送らなければいけないの?
会っても近くの飲食店で話して終わり、それだけの関係ただの友達感覚、少なくとも私のほうはそう思っていたのは確か。
……それが九鬼の罠だとは気づかないで。

九鬼が豹変したのは、あの親睦会から何ヵ月経った頃だろう? その辺りのことはあまり覚えていない。
振り回されていて、感覚が掴みにくかったのかも知れないけど。

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