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喝采
第9章 血しおしたたる
雫石は救急車で大学病院に運ばれた。処置を受けている間、斉賀に電話をかける。すぐに斉賀は病院に駆けつけてくれた。
「斉賀さん!」
「玲音は!?」
「意識もありますし、とりあえず命に別状はないそうです。ただ出血がかなりあったのと、数ヵ所の骨折があるらしく、今手術中です」
「よかった……!」
斉賀は後ろを振り向いてうなずいた。斉賀は一人ではなかった。斉賀と同年配の夫婦らしい男女と一緒だった。男女は雫石の容態を聞き、ほっとした様子を見せた。
「こんなときになんだけど、谷田部っちに紹介するね。玲音の両親だよ」
「え……?」
本当にこんなときに突然現れた雫石の両親に、谷田部は心底驚いた。だが日本にいるのなら斉賀が連れてきて当然だった。十年以上会っていないそうだが、雫石の実の両親なのだから。
「はじめまして。谷田部拓人です」
「玲音の父の雫石崇です」
「母の雫石アリサです。玲音がお世話になっております」
雫石崇は息子の玲音をさらに堅物にしたような印象の、小柄な男性だった。雫石アリサはピアニストとして活躍するだけあってどことなく華のある、やはり小柄な女性だった。
互いに自己紹介はしたものの、その後は誰一人として言葉を発する者はなく、ただ空虚な時間だけが過ぎていった。
どれくらいの時間が過ぎただろう。
ようやく手術室のドアが開き、雫石が運ばれてきた。まだ麻酔が効いているようで、眠っていた。雫石を病室に運び両親が医師から説明を受ける間、谷田部と斉賀がその場に残された。
「斉賀さん!」
「玲音は!?」
「意識もありますし、とりあえず命に別状はないそうです。ただ出血がかなりあったのと、数ヵ所の骨折があるらしく、今手術中です」
「よかった……!」
斉賀は後ろを振り向いてうなずいた。斉賀は一人ではなかった。斉賀と同年配の夫婦らしい男女と一緒だった。男女は雫石の容態を聞き、ほっとした様子を見せた。
「こんなときになんだけど、谷田部っちに紹介するね。玲音の両親だよ」
「え……?」
本当にこんなときに突然現れた雫石の両親に、谷田部は心底驚いた。だが日本にいるのなら斉賀が連れてきて当然だった。十年以上会っていないそうだが、雫石の実の両親なのだから。
「はじめまして。谷田部拓人です」
「玲音の父の雫石崇です」
「母の雫石アリサです。玲音がお世話になっております」
雫石崇は息子の玲音をさらに堅物にしたような印象の、小柄な男性だった。雫石アリサはピアニストとして活躍するだけあってどことなく華のある、やはり小柄な女性だった。
互いに自己紹介はしたものの、その後は誰一人として言葉を発する者はなく、ただ空虚な時間だけが過ぎていった。
どれくらいの時間が過ぎただろう。
ようやく手術室のドアが開き、雫石が運ばれてきた。まだ麻酔が効いているようで、眠っていた。雫石を病室に運び両親が医師から説明を受ける間、谷田部と斉賀がその場に残された。