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喝采
第9章 血しおしたたる
「玲音の両親って、もっと冷たい感じだと思ってました」

 雫石の両親は雫石の容態を聞いて、明らかな安堵の様子を見せていた。親として雫石のことを心配していたようだった。雫石の話からすると、もっと冷たくて子供のことなど気にもかけないという印象を抱いていたので、少し意外だった。

「自分の子供のことを心配しない親はいないよ。でも彼らは親である以上に音楽家なんだ。良くも悪くもね」
「それはどういう意味ですか?」

 斉賀は不思議な笑みを浮かべた。悲しげにも皮肉げにも見える不思議な笑み。

「玲音の素質を見抜き、幼い頃から最高レベルの音楽教育を施して玲音の才能を育てることができたのは、彼らが一流の音楽家だったからだ。でも息子の玲音と未だに仲違いしたままでいる原因も、彼らが一流の音楽家だからなんだ」

 不思議な笑みを浮かべた斉賀の言葉は、やはり不思議なものだった。

「……俺は、玲音と玲音の両親が仲直りしてくれればいいと、簡単に思ってました。でもなかなか難しそうですね」
「そう、難しいんだよ。色々とね。彼らが抱える問題は、音楽家の宿命でもあるから。……僕の口から言えるのはそれだけだ」

 医師からの説明を聞き終えた雫石の両親が、こちらに向かって歩いてくるのが見えた。合流した四人は雫石の病室へと移動した。
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