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喝采
第10章 我、深き淵より御身に祈る
 演奏された曲は、バッハのカンタータがほとんどだった。斉賀のテノールとカウンターテノールのシュミットによるアリア。雫石は軽く目を見張った。

 ――これが、カウンターテノールの声なのか。

 声楽を学ぶ者として、もちろん雫石もカウンターテノールという存在は知っていた。そしてシュミットがそのカウンターテノールの歌い手であることも知っていた。

 だが、これほど心を揺さぶる声だとは思わなかった。斉賀とシュミットの、調和のとれたどこまでも美しい二重唱に、涙が知らずに溢れて止まらなかった。
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