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喝采
第11章 マタイ受難曲
 カーテンコールではソリストである谷田部と雫石も、大きな拍手を受け、観客に頭を下げた。雫石は綺麗な顔を正面に向けたまま、谷田部にだけ聞こえる声で問いかけた。

「拓人。君は受難の先ににあるものを知っているか?」
「ん? 何があるんだ?」

 谷田部も顔を正面に向けたまま、そっと雫石に寄り添う。

「復活だよ。受難の先には復活が待っているんだ」

 キリスト教において、受難節の次は復活祭だった。磔にされたキリストは、三日後に甦る。それが復活祭だ。だが雫石がキリストの復活のことを指しているわけではないことは明らかだった。

「拓人。君のおかげだ。君がいたから、僕は――」

 雫石の視線の先には、両親とシュミットがいた。そして晴れやかな笑顔を浮かべ、再び頭を下げた。
 決してカーテンコールで笑顔を見せなかった玲音の笑顔。
 谷田部もソリストを振り返った斉賀も、驚いて目を見開いた。思わず斉賀が指揮者としての立場を忘れて雫石を抱き締め、観客の拍手はさらに大きくなった。

 今までの雫石の人生は受難の連続だった。だが、斉賀や谷田部ら周囲のの尽力と雫石自身の持つ力で雫石は苦しみから立ち上がり、こうして素晴らしい笑顔を見せるまでになっていた。

 これからの人生はきっと、苦しんだ分だけ喜びあふれるものになるに違いない。

 谷田部が雫石の腕を支えると、雫石は谷田部に一段と輝かしい笑顔を向けた。二人は支えあいながら「マタイ受難曲」のステージを下りたのだった。
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