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埋み火
第2章 熾し火
「賢治さん、私のこと愛人にしたいの?」

「え、いや、霧ちゃんは俺の恋人になってくれたんやろ?」

「私、寂しがり屋なのよ。奥さんのところに帰っていく人のことを好きになったら、つらいのは私よ?」

「もちろん、霧ちゃんが寂しくないようになるべく時間を取って京都に来るよ」

「そうやって頻繁に家を空けて、奥さんに怪しまれて私のことがばれたらどうするの? 奥さんが私の職場に怒鳴り込んで来たら、私クビになっちゃうのよ。慰謝料だって請求されるし、払いきれないわ」

「せやけど……」


 賢治はそんな会話などせずセックスの余韻を味わってまだまだ霧子を抱きたそうにしていたが、霧子は急激に自分の温度が下がっていくのがよくわかった。

 今までさほど熱かったということもなかったが、矢継ぎ早に言葉がぽんぽん出てきた。


「私、二号さんはいやよ。前の旦那がひどい男だったからだいたいのいやなことは流せるけど、どんな人でもいいから私のことはせめて一番に愛してほしいの」

「う、うん」

「仕事と私どっちが大事なんて野暮なことは言わない。それでも、奥さんや子供よりも目に見えて扱いが下なのはつらいわ」


 それは賢治にではなく博之へのずっと言えないでいた霧子の本音だったかもしれない。

 作り物の恋人でいい、博之は次に本当の恋人ができるまでの「つなぎ」なのだと自分を納得させることにしたものの、心底惚れた男の「一番」になれないことがわかったときの傷がいまだ癒えないままに博之から離れることもできない。

 仕事を終え、妻子のいる家に帰ってゆく博之との電話を切るたびにその傷口から血が噴きあがる。

 確かに霧子は博之が自分を想う以上に博之を想っている。

 惚れ、そして男と女の勝負に負けたのだろう。

 ちょこちょこと博之の愚痴を聞いてきたが、日常に倦み、傷ついて心を病むほど疲れてきたのならすべてを捨てて自分を選んでくれればいい。

 それすらしてくれないのだから、自分と過ごす時間にはさほど価値などない。そう悲観してしまう毎日だった。
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