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埋み火
第2章 熾し火
「何よ……それ」

「え、おかしいかい?」

「自分に都合がよすぎよ」


 賢治はきょとんとして、霧子の形のよい唇を指の腹で撫でたまま「そんなつもりはないんやけどなぁ」とつぶやいてまた口づけた。


(この人もそんなこと言うのね。つまみ喰いするつもりで近づいてきて、楽しんだらあとは知らんぷりなんだわ)


 結局のところ、自分はやはり「デザート」なのか。

 賢治に口づけられながら、胸の奥でふつふつと可笑しさがこみあげてきた。


(どうせ遊ばれるなら、この人じゃなくて、ひろがいいわ。捨てられても納得できるもの)


 惚れたほうが負けだぞ、と冗談めかして博之に言われたときのことを思い出した。

 だとすれば賢治は霧子に敗北したのだろうし、それ以上に自分は博之に「完敗」だった。


(そうよ、負けたのよ。だって、好きなのだもの。あの人と出会わなかったら、私はきっとまだパサパサに枯れた抜けがらのような女だったわ)


 今まで、何とか博之に時間を工面してもらってホテル以外でデートした場所を思い出した。

 手をつないで見た貿易センタービル最上階の夜景、洒落たポップスが流れるプラネタリウム。

 夜景も星もすべては「作り物」だった。

 博之という恋人すら「作り物」なのだから、そんなデートでいいと思う。

 押し込められた田舎で見る本物の星空よりも霧子にとってはかけがえのないリアルな幸せだったのだ。

 自分の「本物」に何の価値もなければ「作り物」でじゅうぶん満足できることだってある。

 今は博之と隠れて過ごすあのたった数時間だけが霧子の真実だ。
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