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埋み火
第1章 忍び火
浜松町の路地を線路に沿って五分ちょっと新橋方面に歩くと、汐留の瀟洒なホテル街に出る。
そこを並んで歩いていると、博之のワイシャツからいつもする良い、だが人工的な香りが霧子の鼻腔をくすぐった。
よくある洗剤か柔軟剤なのだろう、街や職場で同じ香りの服を着たサラリーマンとすれ違うことが多い。
「加齢臭対策に相当使われてるかもしれない」ということだが、この香りを嗅ぐだけで霧子は初めて博之に抱きしめられたときのことを思い出して体が甘く疼き、そして同じだけ寂しくなる。
そのシャツを洗っているのは、顔も知らない博之の妻だからだ。
そこを並んで歩いていると、博之のワイシャツからいつもする良い、だが人工的な香りが霧子の鼻腔をくすぐった。
よくある洗剤か柔軟剤なのだろう、街や職場で同じ香りの服を着たサラリーマンとすれ違うことが多い。
「加齢臭対策に相当使われてるかもしれない」ということだが、この香りを嗅ぐだけで霧子は初めて博之に抱きしめられたときのことを思い出して体が甘く疼き、そして同じだけ寂しくなる。
そのシャツを洗っているのは、顔も知らない博之の妻だからだ。