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忘れられし花
第19章 花、咲きて
「私はもう、あなたに隠すものは何もありません。私の体も、心も、すべてあなたに差し上げます」

 部屋を満たす柔らかな白い光に包まれ静かに座る光は、そうしているとまるで一枚の絵画を見ているかのようだった。

「こんなに綺麗な光様を僕が独り占めしてしまうなんて、何だか勿体ないです」

 そっと光に体を寄せると、長い睫毛に縁取られた綺麗な水色の瞳に、奏が小さく映り込んでいるのが見える。だが瞳に映ってはいても、光には奏の姿は見えないのだ。光の瞳の中の奏は、泣いているようにも、笑っているようにも見えた。

「外見の美醜は、目の見えない私にとっては何の意味もありません。ですが、あなたが私の外見を気に入ってくださったのでしたら、それはとても嬉しいことです」

 光は柔らかい微笑みを浮かべた。光は奏が今まで出逢った中で、掛け値なしに一番綺麗な男性だった。繊細かつ端正な顔立ちに、鷹取家の血筋から来る本物の気品が高雅に匂い立つ。容姿自慢が揃う色街にさえ、こんなに美しい男性はいなかった。松永に初めて光と引き合わされたあの時、一目見ただけで、奏は光に魅了されてしまったのだ。

「光様は本当に綺麗です」

 奏は光の柔らかな長い髪を手で梳くとそのまま腕を背中に回し、光を優しく布団に倒した。倒された光は、静かに両の瞼を閉ざした。
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