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記憶の彼方に眠る恋
第7章 失われた記憶
 そんな、紗友莉にとっては驚きの連続となった話のあと、妙に改まった様子で綾子が言った。
「紗友莉にも幸せになってほしいな」
 すると、美香が力強く頷いて同調する。
「うんうん、私も強くそう思ってる! なんだか、淳次君と私が付き合うことができたのって、紗友莉のお陰のような気がしてるんだ」
 美香は感謝のこもった視線を紗友莉に送り、言葉を続ける。
「紗友莉と拓麻君、そして私たちの四人で会ったあの日、紗友莉が私たちのことを『仲良し』って言ってくれたことで、淳次君を見る目が少し変わった気がする。そのあと、私が落ち込んでるときに、淳次君を頼ったのは、きっとそのことも影響してたはず。つまり、紗友莉は私たちの恋のキューピッドだったってこと!」
 嬉しそうに言う美香を見て、紗友莉も顔をほころばせる。
「美香、本当におめでとう。あのときは冗談で言ったつもりだったんだけど、美香と淳次君が上手くいって、よかった」
「鳴澤部長と私がお付き合いできるようになったのも、いつも応援してくれて見守ってくれてる紗友莉のお陰でもあるよ。ありがとうね」
「そ、そんな……私は何もしてないよ」
 そこで、美香が真面目な表情で言った。
「じゃあ、そろそろ本心を聞かせて。紗友莉が、淳次君と私に関してその冗談を言ったあのときは、私たちがいたこともあって、紗友莉は本心を言えなかったんでしょ。でも、今は言えるはず。私たち、誰にも話さないから、教えて。紗友莉は今、誰の事が好きなの?」
 戸惑う紗友莉に向かって、綾子も真剣な眼差しで言う。
「是非、聞かせて」
 綾子と美香が、それぞれの交際について包み隠さず明かしてくれたことが、紗友莉の心を大きく動かしていた。
 紗友莉は立ち上がると、拓麻から受け取ったお守りを大切そうに手にとり、涙声で言う。
「私は……拓麻の事が好き」
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