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記憶の彼方に眠る恋
第5章 活動開始と友人たち
 そして懐かしい教室へと足を踏み入れた途端―――。
 拓麻が唐突に、「あっ!!」と叫んだかと思うと、目を丸くしたまま棒立ちになった。
「な、何か思い出した?!」
 期待を込めて、紗友莉が尋ねる。
 拓麻はすぐには答えず、立ったまま数秒目を閉じた。
 それからゆっくり目を開けると、ようやく拓麻が口を開く。
「随分ぼんやりした光景だけど……。この教室で……。あそこの窓から夕陽が差し込んでて……」
 グラウンドに面している側の窓を指差し、拓麻は続ける。
「窓際の後ろのほうの席に紗友莉が座って何かを書いてて……。それから顔を上げると、隣の席にいる俺に何か話しかけてきて……。教室には二人っきりみたいだ……」
 拓麻の言葉はそこでぷっつり途切れた。
 必死で思い出そうとするかのように、左手を頭に当てて、再度目を閉じる拓麻。
 紗友莉には、拓麻が言っている光景に心当たりがあった。
 だが、拓麻の思索の邪魔をしたくなくて、黙って見守っている。

 拓麻はしばし、「うーんうーん」とうなっていたが、やがて目を開けると力なく首を振りながら言った。
「ダメだ、思い出せるのはそれだけ」
「それって……もしかして……私が居残りの補習を受けることになった日のことかも……」
 言葉を切る紗友莉を、拓麻は黙って見つめている。
 紗友莉はそのときのことについて、拓麻に話した。
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