この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
蜜会
第1章 プロローグ
お金はかかっているし、綺麗めのレンガ造りで新しいんだけど、さして大きくもない地元の駅舎に向かって歩いていたら、目の前の道路脇に停まっていた鮮やかな赤いRV車の中から男の人が私に向かって手を振ってきた。
私よりも一回り以上きっと年上で、四十代くらいかな。
いや、どうだろう。日焼けしていて痩せているように見えるその人は赤いポロシャツを着ていて、私が気付くと運転席から窓を開けて挨拶してきた。
「稲垣所長のお嬢さん? 昨日はどうも」
「あ……はい」
そうだ。
昨日、家のチャイムが鳴ったので出たら父に会社の鍵を届けに来たとかいうおじさんだ。
名前は何だったかな……確か、「安宅さん」って父が言っていた。
それなら日焼けしているのは、きっと現場焼けだ。
昨日は仕事帰りだったんだろう、父と同じ会社のネームが入った薄いグリーンの作業着をワイシャツの上から羽織っていたっけ。
安宅さんは車から降りてきて、私の前に立った。
それで彼を全身、つま先まで見てみると履き古したジーンズに真新しい白のスニーカーという服装だ。
「旅行?」
「いえ、自分ちに帰るんです」
「ああ、帰省してたんだね」
肩から提げている大きめのバッグを見て、安宅さんはそう思ったんだろう。
私よりも一回り以上きっと年上で、四十代くらいかな。
いや、どうだろう。日焼けしていて痩せているように見えるその人は赤いポロシャツを着ていて、私が気付くと運転席から窓を開けて挨拶してきた。
「稲垣所長のお嬢さん? 昨日はどうも」
「あ……はい」
そうだ。
昨日、家のチャイムが鳴ったので出たら父に会社の鍵を届けに来たとかいうおじさんだ。
名前は何だったかな……確か、「安宅さん」って父が言っていた。
それなら日焼けしているのは、きっと現場焼けだ。
昨日は仕事帰りだったんだろう、父と同じ会社のネームが入った薄いグリーンの作業着をワイシャツの上から羽織っていたっけ。
安宅さんは車から降りてきて、私の前に立った。
それで彼を全身、つま先まで見てみると履き古したジーンズに真新しい白のスニーカーという服装だ。
「旅行?」
「いえ、自分ちに帰るんです」
「ああ、帰省してたんだね」
肩から提げている大きめのバッグを見て、安宅さんはそう思ったんだろう。