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蜜会
第1章 プロローグ
私、稲垣瑠璃はここ……海沿いの北陸の街から、電車で一時間半ほど南下したところにある、これも小さい、琵琶湖のほとりの街で一人暮らしをしている。
かといって今いるこの場所が故郷というわけではなく、大学時代の終わりごろに転勤族の父が北陸に異動になったから実家が動いたというだけのことだ。
もともと大学は学生会館にいたので、本当にただ帰省先が変わっただけ。
大仰な距離でもないのに、親が大型連休ぐらい帰って来いとやたらうるさいので申し訳程度にゴールデンウィークは帰省することにした。
といっても出勤は暦通りだし、まだまだ年度が明けて忙しいので連休の後半は少し休日出勤の予定を入れてある。
そして、元々の知り合いもいない北陸に帰ってもつまらない。
就職してから何度か帰ったけどまだ、実家とは思えていない客間に二泊して今、JRで帰ろうとしているところだった。
「そっか。どこまで行くの?」
聞かれて、別に隠すことでもないのでその隣県の市を言うと、安宅さんは「送っていこうか?」とにっこり笑った。
「え、遠いですよ」
車だと、高速を使っても一時間弱。
下道なら二時間以上はかかるだろう。
JRだって乗り換えなしで帰れる新快速は一時間に一本くらいしかなくてそれを逃すと各駅停車で、しかも途中で乗り換えないと着けない。
隣県とはいえまだ自分の車を持たない身にはけっこうめんどくさい距離だ。
「大丈夫だよ。まだ昼だしさ。国道をドライブがてら、どうかな?」
「じゃあ……お願いします」
私が了承すると、安宅さんは嬉しそうな顔をした。
「うんうん。今日は天気もいいしね。まだ、この車を買って日が浅いんだ」
助手席のドアを開けて、彼は笑った。
「馴らし運転にご協力ください、お嬢さん」
かといって今いるこの場所が故郷というわけではなく、大学時代の終わりごろに転勤族の父が北陸に異動になったから実家が動いたというだけのことだ。
もともと大学は学生会館にいたので、本当にただ帰省先が変わっただけ。
大仰な距離でもないのに、親が大型連休ぐらい帰って来いとやたらうるさいので申し訳程度にゴールデンウィークは帰省することにした。
といっても出勤は暦通りだし、まだまだ年度が明けて忙しいので連休の後半は少し休日出勤の予定を入れてある。
そして、元々の知り合いもいない北陸に帰ってもつまらない。
就職してから何度か帰ったけどまだ、実家とは思えていない客間に二泊して今、JRで帰ろうとしているところだった。
「そっか。どこまで行くの?」
聞かれて、別に隠すことでもないのでその隣県の市を言うと、安宅さんは「送っていこうか?」とにっこり笑った。
「え、遠いですよ」
車だと、高速を使っても一時間弱。
下道なら二時間以上はかかるだろう。
JRだって乗り換えなしで帰れる新快速は一時間に一本くらいしかなくてそれを逃すと各駅停車で、しかも途中で乗り換えないと着けない。
隣県とはいえまだ自分の車を持たない身にはけっこうめんどくさい距離だ。
「大丈夫だよ。まだ昼だしさ。国道をドライブがてら、どうかな?」
「じゃあ……お願いします」
私が了承すると、安宅さんは嬉しそうな顔をした。
「うんうん。今日は天気もいいしね。まだ、この車を買って日が浅いんだ」
助手席のドアを開けて、彼は笑った。
「馴らし運転にご協力ください、お嬢さん」