この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
ずっと傍に……
第42章 母の愛…
「お義母さん。お願い事をしてからローソクを消してください。」
遥が母さんに言葉をかけると、母さんは寂しそうに微笑み瞳を閉じた。
そして願い事を口にする。
「ずっと…家族みんなで幸せにいられますように」
フ~とロウソクの火を消すと家族全員の暖かな拍手が沸く。
その中で幸せそうに笑う母さん。
だけど、母さんの幸せがここにはない事は随分前から気がついていた。
どんなに家族が増えて楽しそうにしていても、ここには父さんはいないから。
母さんが幸せに笑えるのは父さんの隣しかない。
だけど、母さん…もう少し俺たちと一緒にいてほしい。
奈津や和也と一緒に居て欲しいと願うのは俺のエゴなのだろうか…
最近は特にそんなことを考える。
父さんと過ごした思い出の詰まったこの家をでることになったからかもしれない。
本当は死ぬまでここで生活をしてほしい。
そう思い、手を入れてギリギリまで伸ばしたけど、これが限界だった。
取り壊すことを告げても、母さんは「仕方が無いわね。相当古いから」と笑った。
本当はこの家を出て行きたくないのは嫌でも分かってる。
分かってるから、せめて居心地が良い場所で生涯を終えて欲しいと…それしか、してやれることはない。