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ずっと傍に……
第22章 幻でもいい…
―――――…
その後の記憶は曖昧で、今、ここにいることが不思議だった。
誰かに支えられながら友紀也を送り出し、建物の中にいるのが苦痛で逃げ出す様に外に出てきている。
ただ煙突から上がる煙を見ながら、私の心の中にあるのは、友紀也の後を追う事。
生きて欲しいと言われても、友紀也のいない人生に意味などない。
いつかは笑える日がくると友紀也は言ったけど、笑える日なんて来るはずがない。
だって…あなたはいない…
「最後の約束…守れなくてごめんね…」
そう呟いても返ってくる言葉は、もうなかった。
暫く流れる煙を見ていると、志保さんが私の元にやってきた。
作り笑いをしながら気丈な態度に、さすが友紀也の妹だと感心する。
「陽葵さん…これ…お兄ちゃんから預かってたの…もし自分が死んだら、陽葵さんに渡してあげてって…そして強く生きて行って欲しいって」
志保さんは封筒を渡してくれた。
そこには陽葵へと書かれてあった。
「お兄ちゃん…ずっと陽葵さんのこれからの事、心配してたよ…自分の後を追わないか…心配してた…だからこれを残すんだって…読んであげてね。最後のお兄ちゃんの言葉…聞いてあげて」
それだけ伝えると、小走りに建物の中に入っていった。
その後ろ姿を見ながら、手に持っている手紙をくしゃりと握りしめた。