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籠鳥 ~溺愛~
第1章
急に横抱きに持ち上げられた美冬は、目を白黒させて鏡哉に呼びかける。
「風呂沸かしてあるから入りなさい。ちゃんと洗うまで出てきちゃだめだ、分かった?」
鏡哉は有無を言わさぬ口調でそう言いながら広い部屋を横切り、バスルームへと入った。
中は広い洗面室、ガラス張りのシャワールームと、外がみられる窓のあるジャグジーがあった。
美冬はまた贅沢な作りのバスルームに口をぽかんとあけている。
鏡哉は美冬を洗面室の椅子に腰かけさせると、てきぱきとタオルを用意しだす。
「あ、あのう……」
「着替えはとりあえずこのバスローブ着て。じゃあ」
そう言い残して鏡哉はさっさとバスルームを出てってしまった。
「くさい……かなあ?」
一人取り残された美冬は自分の背中まである長い髪を一房つまんで匂う。
まだシャンプーの香りが残っている。
(でも今からお弁当屋さんにバイトなんだもんね、衛生的じゃなきゃダメか)
そう思い至って、美冬は大人しく鏡哉の指示に従うことにした。
手早くシャワーで体を流し、湯をたたえた丸いジャグジーに恐る恐る足を入れる。
手近にあるボタンに触れてみると、ぼこぼこと横から泡が出てきた。
「ひゃ〜っ!! わあ、ジャグジーだぁ……」
強い泡が長時間寝て凝り固まった体に気持ちいい。
あまりの気持ちよさにヨダレを垂らして眠りそうになり、美冬はパンパンと両手で自分の頬を叩いた。
「しかし――」
(新堂さんってなんて親切なんだろう。見ず知らずの小娘に寝る場所と食事を提供して世話をしてくれて――)
こんな立派なところに住んでいる人だ、きっとどこかの会社のお偉いさんなのだろうが、鏡哉の見た目はどう見ても25歳くらいだ。
(ここのところ本当にバイトきつかったけど、新堂さんみたいな親切な人がいるんだから、私も頑張らないと!)
美冬は浴槽の中で握り拳を作ると、シャワールームで髪と体を洗い用意された大きなバスローブを着てバスルームを後にした。
「あ、あがった? ちゃんと温まった?」
バスルームからひょこっと顔を出してこちらを伺っている美冬に、鏡哉はリビングのソファーから立ち上がった。
「えっと、ずうずうしくお風呂までお借りしてすみません」
ぺこりとお辞儀をする美冬の髪を触ると濡れたままだった。