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籠鳥 ~溺愛~
第1章
「ちゃんとドライヤーで乾かしておいで」
鏡哉は洗面台からドライヤーを取り出すと、また美冬を一人置いて出て行った。
言われた通り美冬は髪を乾かすが、髪の指通りの違いにはっとする。
シャンプーが良いからか、ナノイオンスチーム付きのドライヤーがいいのか、いつもより格段に手触りがいい。
(すご〜い)
さらさらに乾かして大きな鏡を見つめると、美冬はとたんに気恥ずかしくなった。
下着も何もつけず、バスローブ一枚。
しかもサイズが男物なので、小柄で華奢すぎる美冬はまさにバスローブに着られているのだ。
(う〜ん。年頃の女子なんだけどなあ私も、一応。絶対そんな雰囲気にはならないわ)
美冬は『初めて会った男の部屋でシャワーを浴びる』というドキドキの展開にもかかわらず、妙に『なにもあるわけない』と高をくくってバスルームを後にした。
「乾いた?」
美冬を見つけると鏡哉はリビングのソファーへ手招きして呼ぶ。
「はい、何から何まですみません」
そう言って鏡哉の近くに腰を下ろした美冬の前にライムが入ったガス入りのミネラルウォーターが置かれる。
「本当だ。いい香りがする」
「あの、制服は?」
「今、スチームで洗濯しているからあとちょっと待っていて」
「え! 本当にわざわざスミマセン」
美冬は頭をぺこりと下げる。
「あのさ、話があるんだけど――」
「なんでしょう?」
美冬は炭酸を口に付けながら首を傾げる。
「うちで家政婦しない?」
「……へ?」
「だから家政婦。美冬ちゃん一人暮らしだろう? 家事できるんじゃない?」
炭酸を手に固まってしまった美冬の手からグラスを取り上げると、鏡哉は大きなローテーブルにそれを置いた。
「そ、そりゃあ、一通りのことは出来ますが――」
「じゃあ、決まり。君はこれから私の家政婦としてここに住み込んで身の回りの世話をしてもらう。ちょうどよかった。通いの家政婦がいるんだが、住み込みのほうがいろいろ助かるから」
「……………」
(……嘘だよね? 冗談だよね、新堂さん)
大きな瞳を瞬いて美冬は鏡哉を見つめる。
「君にとって悪い話じゃないと思うんだけど? 勤務時間は朝起きてから学校へ行くまでと、帰宅してから夜の21時まで。後は勉強するなり好きにしてくれればいい」