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籠鳥 ~溺愛~
第5章
「なに? 社長と二人きりになりたくないとか?」
ドキ。
(こ、この人、するどすぎる)
「喧嘩でもしたの?」
「け、喧嘩なんてしたことないですよ」
「じゃあ、好きになっちゃった?」
「………っ!?」
(な、な、なんで知って――!?)
真っ赤になった美冬を見て高柳がくっくっくと笑い出す。
「素直だなあ美冬ちゃんは。社長もこれだけ素直ならいいのだけど――」
最後のほう、ぼそりと呟いた高柳は少し困った顔をしていた。
「……高柳さん?」
「美冬ちゃん」
「はい」
いきなり真面目な顔で見つめてきた高柳に、美冬はなんだろうと背筋を伸ばす。
「僕は美冬ちゃんの味方だから。何かあったら遠慮せずに相談するんだよ」
その表情が本当に真剣で、美冬の心に何か違和感が残る。
「え……?」
(高柳さん……?)
「ほら、着いたよ」
高柳が発した通り、リムジンはマンションのエントランスへと横付けされていた。
外からドアマンにドアを開けられ、美冬は慌てて降りる。
「じゃあね」
「あ、はい。ありがとうございました、送っていただいて」
「うん」
高柳はそう言って車を出させた。
そのリムジンを見送りながら、美冬は首を傾げる。
「……高柳さん、何しに来たんだろう?」
ぼんやりとエントランスに立ち尽くした美冬に、ドアマンが「鈴木様?」と心配そうに声をかけてくる。
「あ、何でもないです。ただいま帰りました」
美冬はそうドアマンにいつも通りの挨拶をすると、マンションの中に入っていった。
スーパーでゆっくり買い物をし何とか気持ちを落ち着けた美冬は、深呼吸をしてマンションの部屋に帰った。
「た、ただいま帰りました」
部屋にいるだろう鏡哉に聞こえるよう、挨拶するが少し声が震えてしまう。
「お帰り。ってこら、買い物したものはコンシェルジュに運ばせればいいって言ってるだろう?」
キッチンに入った美冬を見るなり、鏡哉がリビングのソファーから立ち上がり近づいてくる。
「え、で、でも今日はそんなに重くないし、自分で運んだほうが早いですし」
そう言い訳した美冬に纏わりつくように、鏡哉がいつも通りくっついてくる。