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王家の婚礼(くすくす姫後日談・その2)
第5章 朔

前に帰った時とは違い、双方の周りと公の合意は取り付けてあります。その分二人とも、不安は多少は減っているでしょう。
姫を置いて行くというのは、迷いに迷った末の決断でした。

「…お前の誕生日までには、迎えに来る」
スグリ姫の誕生日は、秋の終わりです。それまで、ふた月ほどありました。
「…うん。」
姫はぎゅっと抱きついて、目の前の温かい胸に唇を押し当てました。
「それまで、花嫁修業して、待ってる。」
「ああ。…だが、別に何もしねぇでいいぞ。待っててくれりゃあ充分だ。」
「ん。」
スグリ姫は頷くと、唇を婚約者の胸に押し当てたまま、抱いて、と小さく呟きました。
応える声は、聞こえませんでしたが。
髪をなでていた手が背中に回り、唇を唇で掬われて、スグリ姫は滲み始めた涙が溢れない様に、そっと瞳を閉じました。





ぐずぐずと何か呟いていた声が止み、すうすう規則正しい寝息が聞こえてきて、サクナは暗闇で目を開けました。

(…寝たか)

腕の中の婚約者の顔は、ほんの少し眉を寄せているようでしたが、眠りに落ちては居るようです。

『んっ…もっと、いっぱいっ』
『…おくっ…ちょうだい、っ』

そっと髪を撫でていると、先程までの姫の、何かに追い立てられるかのように乱れる姿が思い出されて、サクナは胸が詰まりました。
恥ずかしがることが多いスグリ姫が、今までにない激しさで自分を求めてきたのです。
そんな姫に応えながら、待っている、と言ってくれている姫が本当はどう思っているか、サクナは痛いほど感じました。
先程させて欲しいと言ってきた事も、もしかすると、何かを予感してのことだったのかもしれません。

(…クソっ…何もしてやれねぇ)
もし自分がこの地に来なければ姫はこんな思いはしなくても良かったのだろうか、という気持ちがふと湧き上がりますが、考えても詮無い事です。
言いたい言葉が沢山ありましたが、どれを取っても無意味に思えて、愛しい茶色の髪に口づけながら、ただ一言だけ、口にしました。

「…お休み、スグリ。」



それが、月の見えない長い夜の始まりでした。
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