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くすくす姫の誕生日(くすくす姫後日談・その4)
第3章 初めての夜ば…もとい、「お誕生日」の贈り物

「よっ?!夜這いぃ!?」

いよいよ姫のお誕生日が明日に迫ったという夕方。
明日の予定を確認しておこうとしたバンシルは、姫がもじもじと「お願いがあるの」と言い出した、その「お願い」の内容に、頭が真っ白になりました。

「しーっ!バンシル、しーーーっ!!」
スグリ姫はバンシルの大声に驚いて、他には誰も居ない部屋の中を見回しました。
姫の様子を物ともせずに、バンシルは普通の声で呆れたように続けました。

「何処の世の中に、自分の誕生日の前の日に、婚約者の部屋に夜這いする姫が居るんですかっ…!!」

「でもー、」
スグリ姫は自分が主張している「夜這い」と言う言葉に全く似つかわしくなく、愛らしくはにかんだ顔で、ぽっと頬を染めました。

「初めてのとき、朝起きて一番最初に『おはよう』って言えて、すごーく幸せだったから…同じように、お誕生日に一番最初に、『おめでとう』って、言われたいの。」

「本人に、そう言や良いでしょう?姫様の言うことなら、何でも二つ返事でしょうに」

特に「夜、部屋に行きたい」などと言われたら、二つどころか三つでも四つでも百でも返事するだろうに、とバンシルは自分の想像に辟易しながら言いました。

「だって…、」
バンシルの言葉を聞いた途端に、スグリ姫は誰かの様に眉をひそめた、不機嫌そうな顔になりました。

「そんなこと言ったら、日が変わる頃まで、起きてられるか分からないもの…」
「あー…確かに、そうですねー…」
食べ頃の果物が自分から落ちてきたのに内心大喜びしながら不機嫌顔で弄繰り回してぐったりさせる様子が目に浮かぶ、とバンシルは遠くを見ながら思いました。


「バンシル…ねぇ…だめ?」
魂が体から離れかけていたバンシルは、姫の言葉ではっとしましたが、どこか遠くに行ってしまいたくなるような遣り取りは、全く終わっていませんでした。

「駄目って言ったら、聞くんですか?」
「え?……えへへへへー?」
こっそり行っちゃうかも?と言う姫を見て、バンシルは溜息を吐きました。

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