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SOS
第1章 邂逅と訣別
死を目前にした人間は、死の恐怖に打ち勝つことはできない。しかしまれに、死の恐怖をも上回って何かを願う人間がいる。
「つまり……“死にたくない“、という気持ちよりも、それ以上に何かを願う人間のところに悪魔はやってくる、と……」
「あぁ、お前は死の恐怖よりも、願いを叶えられないことに絶望していただろう?」
「まさにお前のような人間のところに、悪魔は引き寄せられる」
「そしてそういう人間の願いを叶えてやるんだ」
「だから何故──っ」
悪魔は急に無表情になった。割り込んで話そうとした木崎は悪魔のその顔があまりにも恐ろしく、口を噤んだ。
それを確認した悪魔は満足したのか、再びゆったりとした口調で語り始めた。
「……一つ条件がある」
「願いを叶えてもらった人間は、必ず地獄に墜ちる」
「地獄……」
死後の世界は、天国と地獄があると言われている。木崎はそれまで、死後の世界なんて生きた人間の妄想だと思っていた。
しかしこの世の者でない悪魔が言うのなら、実際に死後の世界──地獄は存在するということだ。
「つまり願いは叶えてもらえるけど……死んだあとは苦しいってこと……?」
「……」