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キス・イン・ザ・ダーク
第1章 キス・イン・ザ・ダーク
あたしはマスターに『とにかく強くてすぐに酔えるのをちょうだい』と言いながら、バーの重い扉を開けた。
初めて入った店だというのに、我ながら随分な我が物顔だと思う。
オレンジのライトに木目調の調度品は”いかにも“という雰囲気だった。
あたしは既にだいぶ出来上がっていたけれど、それでも酒を呑まずにはいられない。
そんな気分だったのだから仕方ない。
『優樹菜はイイオンナなんだから、すぐに新しい恋を見つけられるわ』
そう言ったのは、大学の同期生の彩夏。
居酒屋であたしの失恋を慰めるパーティーをしていた時に──つまりは三時間前に聞いた言葉。
「そうは言っても、忘れられないのよぉ……」
あたしはバーカウンターに座り、マスターが出してくれた酒を呷る。
マスターはただただあたしの泣き言を聞いている。
質の悪い酔っぱらいの話し相手なんて、あたしなら五分も経たずして逃げ出しているだろう。
バーテンダーも難儀な仕事ね、とまだ心の中に残っていた冷静な私がマスターに頭を垂れた。
そんな私が3杯目……いや、4杯目のグラスに手をつけようとした時だった。
「キス・イン・ザ・ダーク……口当たりがまろやかで呑みやすいけど、アルコール度数は高い。所謂レディキラーと呼ばれるカクテルだね」
あたしはいつの間にか隣に座っていた男を睨み上げた。
興が削がれた苛立ちと、突然話しかけられて純粋にびっくりした。
その二つが混ざった目で。
初めて入った店だというのに、我ながら随分な我が物顔だと思う。
オレンジのライトに木目調の調度品は”いかにも“という雰囲気だった。
あたしは既にだいぶ出来上がっていたけれど、それでも酒を呑まずにはいられない。
そんな気分だったのだから仕方ない。
『優樹菜はイイオンナなんだから、すぐに新しい恋を見つけられるわ』
そう言ったのは、大学の同期生の彩夏。
居酒屋であたしの失恋を慰めるパーティーをしていた時に──つまりは三時間前に聞いた言葉。
「そうは言っても、忘れられないのよぉ……」
あたしはバーカウンターに座り、マスターが出してくれた酒を呷る。
マスターはただただあたしの泣き言を聞いている。
質の悪い酔っぱらいの話し相手なんて、あたしなら五分も経たずして逃げ出しているだろう。
バーテンダーも難儀な仕事ね、とまだ心の中に残っていた冷静な私がマスターに頭を垂れた。
そんな私が3杯目……いや、4杯目のグラスに手をつけようとした時だった。
「キス・イン・ザ・ダーク……口当たりがまろやかで呑みやすいけど、アルコール度数は高い。所謂レディキラーと呼ばれるカクテルだね」
あたしはいつの間にか隣に座っていた男を睨み上げた。
興が削がれた苛立ちと、突然話しかけられて純粋にびっくりした。
その二つが混ざった目で。