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柊屋敷の嫁御様(くすくす姫後日談・その5)
第13章 柊屋敷の嫁御様
「何があっても…たとえ、あなたがまだ私には言えない事が他にもあったとしても、私の気持ちは、変わりません」
「…お前…」
サクナは、スグリ姫が凛然と放った一言に打ち抜かれました。スグリ姫は全て含んだ上で、自分と添うと決めてくれていたのです。

(覚悟が足りなかったのは、俺の方だったか)
サクナは清らかで気品に満ちた姫の姿に心を奪われながら、姫をまだ見くびっていた我が身を恥じました。

「…だから、もしも秘密の奥さんと子どもが、どこかに居るって言われても、」
「……は?」
「私、大人しく身を引いたりなんか、しなくってよっ!」
「……おっ前っ……………お前はっ……そういう、奴だったっ……」

最初はしっかりしていたスグリ姫の言葉は、どこをどう通ったらそこへ行き着くのか良く分からない結論に、着地しました。
サクナは姫に惚れ直しつつ真剣に耳を傾けていたのですが、何故か辿り着いた突拍子も無い結論に、思わず吹き出してしまいました。

「…何だよ、そりゃ…!女なんざお前の他にゃ居ねぇし、ガキなんざ、もっと居ねぇよ…!!」
「…あら?居ない?やっぱり、居なかった?」
サクナは笑い続け、姫は握っていたサクナの手を取って、嬉しそうに頬擦りしました。

「良かったー!ほっとしたわ!実は、言ってみてから、そんな人が本当に居たらどうしようって思っちゃって、一瞬本気ですごーくドキドキしちゃったわ!」
「…そんなもん、居るかよ…」
サクナは姫に贈られた額を、大事そうにテーブルに置きました。それから掌で姫の頬を撫で、それから姫の髪を撫で、そのまま姫を抱き寄せて、髪と額に口づけました。

「この、とんでもねぇお姫様め……俺が墓場に持って行きてぇのは、お前だけだ」
「え?お墓?!」
今度はサクナが発した突拍子も無い言葉に、姫の目が丸くなりました。サクナはそれを見て微笑むと、姫を自分の膝の上に抱き上げました。

「先代が…親父が、言ってたんだよ。人生に一つだけ、それさえ墓場に持っていけりゃあ満足だって物が有る、ってな。何かは教えちゃくれなかったが、俺にもいつかそういう物が出来るかも知れねぇって、そう言ってた」
サクナはそこで言葉を切って、姫の両頬を両手でふにょっと挟んで引き寄せて、右と左の頬に、ちゅっと軽く口づけました。
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