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嫌がらせ
第1章 嫌がらせ

「……俺のせいか」

父はじっと身を硬くして、下を向いていた。

「え?」

「俺が、お前に手術を勧めたから……」

私は絶句した。まさか、父がそんな負い目を感じていたとは。

確かに、手術の話が出たときには、父に相談した。というか、父以外には誰にも話していない。

実際、とても一人で決断できるような問題ではなかったから。

父は手術を勧めた。が、それはあくまで父の意見であって私の意見ではない。

それに父は、こうも言っていたのだ。
自分は女じゃないから、子宮を失う辛さを、子供が産めない苦しみを、分かってやれない。だから俺の意見は無視していい。お前がどっちを選ぼうとも、俺はお前の意見を尊重する、と。

「すまない」

「いや、違うってお父さん……。最終的には、私が手術するって決めたから」

だから、そんなに自分を責めないでよ、と言おうとした────

「ただもう、俺は失いたくなかったんだ」

悲痛に満ちた声。父の肩はぶるぶると震えていた。

「これ以上」

私は、何も言えなくなった。

「お前まで失うのかと思うと、たまらなく怖かったんだ」
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