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ビスカスくんの下ネタ日記(くすくす姫後日談サイドストーリー)
第8章 ビスカスくんの一番長い日
「お嬢様…申し訳有りやせん。ご覧の通りで…しくじりやした」
「身内相手じゃ、仕方無いわね…」
「え」
お嬢様はまた溜め息を吐くと俺の傍らに座り込んで、ぶっ刺さってる鋏を指差した。

「お前、私を誰だと思ってるの?見たら分かるわよ。これ、お義姉様がいつも持ってる、守り鋏じゃない。…どうしてこんな事になってるのか、事情は分からないけど」
さすが、聡明にして炯眼を誇るお嬢様。
ウサギ姫がうっかりしねーでも、何が有ったかバレバレでしたか。

「…若奥様がご乱心なすってスグリ様に刃物を向けられたんで、止む無く叩き伏せて、縛り上げやした。この向こうにお出でです…お止め出来ずにこんな羽目んなっちまって、申し訳有りやせん」
「そう」
「お叱りに、ならねーんですかい」
「どうして叱る必要が有るの?」
「へ?」
「そういう時のお前の判断は、正確無比で最善よ。自分自身より信頼出来る人間を叱る必要なんて無いわ。…それより」
「へい?」
「お前…どうして、こんなに、弱ってるの?」
「えーと…」
「スグリ様を庇った上に、お義姉様に手加減したわね」
「…へえ…仰る通りで…」
仰る通り過ぎて、何にも言えねえ。
「馬鹿じゃないの?お前は、女に甘過ぎるのよ」
「…面目無えです…」
「お前、そんなに嘘吐きになりたいの?」
「へ」
…嘘吐き。
お嬢様が余興の後に絞り出す様に口にした、俺の聞きたく無ぇ言葉を、今度はひょいと軽く口に乗せられた。

「ビスカスは、私の為に死ぬんでしょ?私に正式に付く事が決まった時に、そう誓ったわよね?」
…ああ。そうだ。
お嬢様の先代の護衛が年で引退する時に、後継は俺にしてくれって御領主様に直談判した。そん時お嬢様に、遊び相手が居なくなるって泣かれて、そう誓ったんだった。
そん時お嬢様はお小さかったからきょとんとなさってたが、その後仕事で怪我する度に、言われてたっけねー。お嬢様ぁまだまだ生きる予定なのに、護衛がとっとと死ぬなんて有り得ねーとかな…考えてみりゃあ、お小せぇ頃から暴君だった。
怪我も久し振りだから、忘れかけてたわw

「…なのに、他の女の為に死んだりしたら、大嘘吐きな上、犬死にじゃない。馬鹿馬鹿しい。一生許さないわよ」
あー。さすが、お嬢様。
怪我人を前にしても、切れ味鋭い悪口雑言の数々…やべえ、勃つわw
うーん…今際の際にゃあ勃つってなぁ、本当だったんだねー。
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