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彼女の不幸
第1章 はじまり
来客は園で世話になっている業者の男だった。

先日の請求書を持ってきたという男は、静まりかえった園内をのぞき込んで尋ねる。


「今日は子どもはいないの?」

「あ、はい」


何度も園を出入りする業者であるという慣れから、自分が女であり、相手が男であることの意味を意識できなかった彼女は続けた。


「今日は子どもたちがいないので私一人なんです」


その一言が男のスイッチを押してしまうとは、彼女は思いもしなかった。

男は無意識に、彼女の全身をなめるように眺めた。


仕事で出入りしているときに見かけたことは何度かあった。

若くて胸のでかい彼女に目が留まることは何度もあった。

あの乳にむしゃぶりついたら…押し倒して犯したら…と考えたこともあった。


今も彼女を見て、ラッキーとは思ったのだ。

だが理性のある男は、それ以上は何も考えなかった、そう、彼女の一言を聞くまでは…


彼女の笑顔が固くなり、一歩後ずさったのを見て、男の中の何かが外れた。

彼女も男の雰囲気が変わったのを感じた。

背を向けて走り出した彼女を、男は追いかけた。
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