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愛おしいキミに極甘な林檎を
第50章 pallidus memoriae*儚い恋と永久の愛

いつも仕事を休まずに行っていて、私と旅行に行く時くらいしか有休を取っているところを見たことがなかった。
「今は副社長をしているから社員が有休を取りやすいように積極的に取るように言われているんだよ」
「副社長!?随分と昇進しましたね……」
「仕事しかすることがなかったから。有休があっても家に持ち帰った仕事をするくらいで結局休んでいる気がしないんだけど。今日はこうして休日らしいことができて嬉しいよ」
その嬉しいはどんな意味で言っているんだろう。
付き合う前も、付き合った後も好意的な笑顔しか見せていなかったから分からない。
別れた後の今だって、優しい目をして笑っていて同じだから困ってしまう。
運ばれてきてから手を付けないでいたコーヒーカップを持つ前、塑羅緒さんはマスクを外した。
「風邪ですか?また無理してるんでしょ」
「いや、風邪は引いてないよ。……でも無理をしたのかもしれない。実はこの前、女に言い寄られてね」

