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第50章 pallidus memoriae＊儚い恋と永久の愛

「前に話したとおりだよ。それ以外に何の理由もないから」


「それだと私の気持ちを考えていないじゃないですか……。笑顔をなくした時の私の声、届いていなかったんですね……」



「……ごめん」


切なそうな声で謝った塑羅緒さんは私を強く抱き寄せた。



「ふたりのことをひとりで悩むのはずるいですよ……」

「そうだね。俺の我儘だったのかもしれない」


触れることができて嬉しいはずなのに胸がズキズキして苦しくて堪らない。


だから私も同じように塑羅緒さんの背中に手を回せなかった。



抱きしめてしまったら今まで大切にしてきてくれた夫を裏切ることになる気がする。


でもずっと忘れられずにいて心から愛している人は目の前にいる人……。