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愛おしいキミに極甘な林檎を
第50章 pallidus memoriae*儚い恋と永久の愛

「かっ、乾いたら帰ります!もう他人なんですし、泊まるわけにはいきません」
「冗談だよ。風子が子供のことを大切に思ってるのも分かるから」
声のイントネーションが冗談に聞こえなかったから本気だと思った。
結婚しているんだから誘ってもらえて嬉しいと前のように浮かれることなんてできない。
でも家に行くことを断っても結局押されて来てしまったんだから、悪い事をしていると同じ気もする。
このくらいの出来事なら夫に話すことができるけど……。
今はどう思われるのか分からない。
愛している人のすぐ近くにいるのに、私はまだいい母親を演じている。
この役割から降りることができるのなら今すぐ塑羅緒さんの胸に飛び込んでいそうだ。
心にしまっていた気持ちを必死に抑えながら髪の毛と服を乾かしていた時、塑羅緒さんが側にやって来てドライヤーを貸すように手を出してくる。
使うのかと思って渡すと私の背後に来て、代わりに髪を乾かしてくれた。
長い指で私の髪を優しく丁寧にとかしてくれていて付き合っていた頃と変わらない温かな愛情を感じる。

