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愛おしいキミに極甘な林檎を
第51章 偽りの恋人

もし、この事でソラ先輩との婚約を破棄されたら一生恨んでしまうかもしれない……。
課長がデスクに戻って来てからは、私は大人になってなるべく普段どおりの態度で接していた。
異変を感じていた陸田さんは混乱していたけど、何とか今日一日誤魔化してやり過ごすことができた。
仕事が終わったのは一時間ほど残業をした頃。
会社から出て室内と外の温度差を感じて体を震わせながら足を進めると、近くでソラ先輩が待っていてくれた。
目が合うと我慢していた怒りが吹き飛んで、自然と笑みが浮かんでくる。
「風子、お疲れ様。今日は仕事が早く終わったから待っていたよ」
火ノ浦さんから何も聞いてないのか、ソラ先輩の機嫌が朝と何ら変わらなくてホッとする。
「ありがとうございます、ソラ先輩。今日は暖かい鍋でも食べたい気分なので材料を買って帰りたいです」
美味しい物を食べて体を温めて、冷静に話し合えば難しい話もきっと解決するはず……――――

