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愛おしいキミに極甘な林檎を
第51章 偽りの恋人



泣いていても時間は刻々と進む。今日は金曜日で仕事があるから数十分後には会社に行かないといけなかった。


本当は行かないで泣いていたいけど、もう立派な社会人なんだからこれくらいで休むわけにはいかない。


涙で濡れた顔を化粧で隠してから家を出て、早足でマンションの玄関へと向かう。



「乙羽……、おはよう」


俯いて歩いていたから、声を掛けられて課長がマンションの近くで待っていたことに気付いた。


助けてもらう前だったら驚いていたと思うけど今はそんな気分じゃない。



「……おはようございます。どうしてここにいるんですか」



「塑羅緒くんに乙羽のことを支えて欲しいと頼まれてな」


昨日、ソラ先輩と課長が話していた内容はやはり私のことだったんだ。

そうでないとこのタイミングで課長はここにいるはずがない。


住所は変更届を出した時に見られていたにせよ、どこに住んでいるのか詳しく教えていなかったのだから。



「私……、課長のことをやっぱり許せません」


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