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愛おしいキミに極甘な林檎を
第51章 偽りの恋人

先に数々の幸せを手に入れている陸田さんと鈴川さんが羨ましく思えてしまう。
私とソラ先輩は五年も付き合って、婚約してから三ヵ月も経っている。二人と比べたら随分遅い。
比べるべきことではないのは分かってるけど、今の状況もあって寂しさを感じた。
惚気話を聞かされながらマンションの近くまで二人に送ってもらった後、明かりが点いていない家に帰る。
照明と暖房の電源を入れてから、テーブルの上に置いたままのソラ先輩からの手紙をもう一度読む。
【あのさ、昨晩は郁哉さんとのことを聞いて何も言えなくなってごめんね。
いっしょにいない間、風子の身が心配だったからハグをされたことを知って驚いたよ。
ショックだったけど、過ぎたことだから仕方ないって思ってる。
手紙にこんなことを書いてごめん。本当は口で言わないといけなかった。頭が冷えるまで
留守にするけど寂しいなら実家に行っていいからね】
普段は用件を二行ほどで納めているのに、長文で書かれている。
朝は見落としていたけど“頭が冷えるまで”っと記されているから家に帰ってくる気はあるんだろう。
やっぱり連絡しないで待っているしかないのかな……。
仕事が終わってから、ソラ先輩は一体どこに行っているんだろう……。

