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愛おしいキミに極甘な林檎を
第59章 ふたりからひとつへ

なんだか見張られている感じがして、思うような会話ができない。
そもそも、この格式の高い店に来るために必要であるテーブルマナーの話をウエイターの前でするのも恥だと思えてくる。
「お手伝いの社さんも来ると思うよ」
「そっ、そうなんですか……。社さんも……」
言われてみて気づいたけど、向かい側の席には三人分の食事の準備されてある。
社さんは話を分かってくれた人だし、雇い主の家庭の事情に積極的に口を挟んでこないだろう。
彼が増えても緊張する度合いは変わらなくて、借りてきた猫のようになってカチコチに固まったままの私。
「風子、大丈夫だよ」
ソラ先輩はスカートの上で作っていた私の拳を手のひらで包んでから、反対の手で自らを指さした。
そしてすぐにテーブルに置いてある食器を自然と指さし、親指と人差し指で丸を作ってから、親指を立てた。
これは恐らく、私に向けたジェスチャーだ。

