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愛おしいキミに極甘な林檎を
第59章 ふたりからひとつへ

じっくりと考えている暇もなく、紹介された私はもう一度お辞儀をした。
大人なんだし、ここは黙っていないでしっかり挨拶をするべきだろう。
話を振ってくれたチャンスを活かして好感度を上げないと……。
「はっ、初めまして。おっ、乙羽 風子と申します。
えっと…、ごっ、ご迷惑をおかけして、もっ、申し訳ありませんでした!」
金持ちの彼氏がいなければ、生涯プライベートで会うことがなかったと思われる大手企業の社長。
大それた人を前にして、あがってしまうのも仕方がないと思う。
でもぎこちない挨拶と謝罪を終えてから気づいた。
肝心の主語が抜けてしまっていたことに……。
「彼女が謝っているのは先日お爺様ともお話しした騒ぎのことです」
「……そうか。座りなさい」
補足してもらえたのにも関わらず、お爺さんにさらりと流されて話題をフライングした気分だ。
なんだか先行きが不安になってきた。

