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愛おしいキミに極甘な林檎を
第59章 ふたりからひとつへ

信頼を回復するために私がしないといけないことは、テーブルマナーを知らないことでさえ可愛く思えてくるほど非現実的なもの。
しかも、一番下にはサインを書くような欄があるから冗談でないことが分かる。
クリアファイルの中にその書類を戻した後、私はもう一度立ち上がった。
「あの……、食事中にすみません。お手洗いに行ってきてもいいでしょうか?」
「いってらっしゃい。大事なことなんだから少し頭を冷やしてから考えることね」
「はい……。失礼します」
「風子……」
ソラ先輩が心配そうな顔で私を見てきたけど、会釈をしてから部屋を出る。
ドアを閉めた後、一気に張り詰めていた力が抜けていった。
「ふぅ……」
普段あまりすることのない溜息さえ漏らしてしまう。
でも他のウェイターが慌ただしく廊下を歩いていて私を不思議そうに見て来るから、ずっと我慢していたトイレへと急いで向かった。
見慣れない土地に来ても、誰もいないトイレが一番落ち着く。

