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愛おしいキミに極甘な林檎を
第62章 愛おしいあなたに……



「はい。私も分からないことだらけで最近不安になっていたので、なんとなく気持ちが分かりますから」


今だって入院する前のことは思い出せないから不安がたくさんある。


さっきだって知り合いがいたのに声を聞いても分からないし、控室に戻る道も分からない。



「でもひとりじゃないから大丈夫ですよ。手を伸ばせば握り返してくれる人が必ずいます」


自信を持ってそう言えるようになったのは、いつも握ってくれている人がいるからなんだと思う。


詳しくは思い出せないけど、私は過去に希望が見えない真っ暗な道をひとりで歩いていたことがあったような気がする。


笑うことのできる明るい未来の道へ進むことができたのも、きっと握ることのできる温かい手があったから……。


そのおかげで私も誰かに手を伸ばすことができるようになった。



しゃがんでいるヘアメイクさんに向かって手を伸ばすと涙を拭ってから握ってくれた。


「そうですよね……。初めて一人でこの仕事を任されたので緊張していて忘れていました。
首の後ろの痣をなんとかカバーできないか相談してみます。まずは先輩に電話を……」


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