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愛おしいキミに極甘な林檎を
第65章 番外編:Totus tuus

今日は職場に着いてから「おはようございます」の決まった挨拶をしただけ。
自分の仕事が溜まっていたから何も話すこともなく今の時間に至る。
パソコンの画面を見つめてキーボードを打ち、掛かってきた電話を取り、他の社員と仕事の話をしている。
でもそれは仕事をしに来ているのだから当たり前のこと。
いつもは当たり障りのない雑談をぽつぽつとしてくるんだけど、今日はそれさえもしてこない。
キーボードを打つ手が止まり、椅子の背もたれに背中を付けた時、勇気を出して声を掛けてみる。
「かっ…、課長。あの……」
不安そうな声で呼んでみると、背伸びをして私の方に視線を向けてくる。
だけど、忙しそうにしている時にする曇った表情のままで笑顔に変わることはなかった。
「すまない。今、やってる仕事から手が離せないんだ」
「あっ、はい。分かりました」
あれ……。タイミングが悪かったんだろうか……。
忙しい時でもいつも優しく私がする質問に答えてくれていたのに……。

