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愛おしいキミに極甘な林檎を
第65章 番外編:Totus tuus

信号が青になって止まっていた車を再び走らせる理人さん。
薄暗い中で見えた横顔はいつもの冷めた表情をしている気がしたけど、その言葉はどこか皮肉めいたようにも聞こえた。
「私は貧乏の家庭で育ったので。結婚するならやっぱりお金持ちがいいですよね。彼氏と付き合ってからはお金に苦労してる気がしませんし」
「やはりそうですか……」
「なんて言ってみましたけど、本当は彼氏にお金があるとかないとか気にしたことがないんです」
「ここには本人がいないんですから嘘をつかなくてもいいですよ。交際相手のお金事情は女性は普通気にするところでしょう」
理人さんはどうしてそんなことを言うんだろう……。
私にはまだ話さない何かが過去にあったようにも思えた。
でもそこを聞いてはいけないような気がして私は話を続ける。
「彼氏が入院して、この先利き手である右手が動かなくなるかもしれないと知った時、決意できたんです。
もし彼氏が仕事をできなくなってしまったら私が支えてあげようって。どんなにお金が大変になっても一緒にいたいって思えましたから」
「ああ……、僕が警告したのにも関わらず風子さんは塑羅緒さんと結婚する気でいましたよね……」

