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第65章 番外編:Totus tuus

理人さんにソラ先輩との結婚を反対されていたことが今となっては懐かしく感じる。


私の祖父の跡継ぎ問題が解決してから丸くなったものだ。


今話している視線はあの頃よりずっと柔らかいものに見える。


「はい。……それに彼氏は駆け落ちしようって言ってくれたんですよ」

「えっ……」



「私のためにすべてを捨てるつもりだったみたいです」


「職まで捨てられるなんてどこまでも怖い人ですね……」


そう言いつつも理人さんの口角は上がっていて、ソラ先輩のその一面を認めているみたいだった。


「あはは、そうですよね。……どんなに貧乏になっても私は彼氏と一緒にいたいんです。きっとそれは彼氏も同じ気持ちのはずです」



「おかしな人たちですね。世の中、お金が一番大事だというのに……」


「命があればなんでもできますから」


「なくしてしまっては意味がありません」