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愛おしいキミに極甘な林檎を
第65章 番外編:Totus tuus
「いや、普通だが」
「もしかして風子に愛想尽かされたとか?」
「…………」
「何も言わないってことは本当ってことですか?」
「いや……。ただ……、嘘はつくものではないと思ってな」
「嘘……?
本気で好きな女にはつかない方がいいですよ」
「いいから、ほら、行くぞ。
日報をちゃんと提出したのか確認するからな」
ドアの向こうにいた二人の足音が離れていく。……なんとか助かった。
五分くらい経ったあと、郁哉さんが裁縫セットを届けてくれた。
もう話はないのかすぐに去っていったけれど。
念のために休憩室に鍵を掛けてから、スカートを脱ぐ。
借りたジャケットを膝にかけて破れた部分を縫っていく。
郁哉さんのことを考えて、複雑な気持ちを引きずっている。
それは、私が向けられた好意に応えられなかったからだ。
好きな人に自分の気持ちを伝えても届かない。
ソラ先輩から連絡がこなくなって振られたと思った時、たくさん傷ついた。
郁哉さんのことをあの時の自分に重ねてしまっていたんだろう。
だから、本気で冷たくすることも、無視することもできなかった。
でも、中途半端じゃいけない。
一番大切なソラ先輩のことも傷つけてしまうから……。
私はもう……、郁哉さんと会わないほうがいいんだろうか……。

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